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原油価格、1バレル80ドルまで下がる? 「投機バブルの終焉」という見通しも 2008年9月9日 火曜日


 ここ数年、エネルギー市場のトレーダーとハリケーンシーズンの到来が原油マーケットにもたらす影響といえば、たいてい1つに決まっていた。価格の上昇だ。

 だが、米国南部を襲ったハリケーン「グスタフ」が去った今、ドル相場の回復の方が、大西洋で新たに発生する暴風雨より大きな影響を相場に及ぼしている。トレーダーから見れば、最近は不安定な米経済の先行きの方が、嵐よりもずっと恐ろしいのだ。

 9月2日、米ニューヨーク・マーカンタイル取引所(CME)では、指標となる米国産標準油種(WTI)の10月物の価格が6ドル近く下がり、終値は1バレル109.71ドルとなった。これは、4月上旬以降では最安値の水準であり、7月11日に記録した史上最高値147.27ドルから37.56ドルも下落した。

 グスタフがメキシコ湾地域の石油・天然ガス施設にさほど打撃を与えなかった一方で、トレーダーや投資家は、自然現象による影響を重要視しなくなってきている。ドル高に加え、米経済や世界経済の低迷の方が、原油価格を大きく左右していると専門家は指摘する。

 実際、現在の原油価格を決めるうえで、米経済の成長低下で懸念される石油の「需要崩壊」の方が、気象や地政学的な不安要素より大きな影響を及ぼしている。

 米エネルギーリスク管理会社キャメロン・ハノーバーのベテランアナリスト、ピーター・ビューテル氏は、「ハリケーンが目前まで迫り、200万バレルの生産能力がある石油精製施設や、沖合油田施設の96%が危機にさらされても値上がりしないのなら、原油が高騰するとはとても思えない」と語る。


■現実的な相場価格への回帰

 原油価格が大幅に、また急速に下落したことで、専門家は“投機バブル”の崩壊がさらに進むと予想している。多くのアナリストは、底値は100ドルどころか、70ドルから80ドルの水準まで下がると見ている。

 「年内、早ければ9月中にも、原油価格は80ドルまで下がるだろう」と、米シカゴのエネルギーコンサルティング会社ファンダメンタル・アナリティックスのジョエル・フィンガーマン社長は述べている。

 米証券会社オッペンハイマー(OPY)の上席エネルギーアナリスト、ファデル・ゲイト氏は、「原油が値下がりしているのは、これまでの価格が膨張していたからだ。不自然な価格をいつまでも維持することはできない。最終的には、価格は需要と供給のファンダメンタルズ(基礎的条件)に基づいて決まる」と語った。

 石油トレーダーや一部のアナリストは、原油価格の高騰は新興市場での需要増加に起因するとしてきた。だが、今では米経済の低迷の影響が全世界に広がっている。

 「数カ月前には、中国の需要が原因だと論じられていた。だが、(原油価格の)強気相場を支えてきた要因の多くは、実体のないものだった」と、ペンシルベニア州ビラノバのエネルギーコンサルタントで、日刊の業界ニューズレター「ショーク・リポート」編集長のスティーブン・ショーク氏は話す。

景況の悪化と需要の減少に加えて、ドル高が最近の原油価格下落の要因になっている。7月15日以降、ドルの対ユーロ相場は8.5%のドル高となっている。「原油価格下落を説明する最も妥当な理由はドル高だ」と、キャメロン・ハノーバーのビューテル氏は言う。


■原油の下落に伴って航空各社の株価が上昇

 9月2日、エネルギー企業の株価が下がったのに対し、燃料費の値下がりを見越し、航空会社の株価が急騰した。米ノースウエスト航空(NWA)は13%値上がりの11.07ドル、米ユナイテッド航空の親会社の米UAL(UAUA)は9.5%値上がりして12.16ドル、米アメリカン航空の親会社の米AMR(AMR)は8.7%値上がりの11.23ドルとなった。今年、航空各社の株価は原油価格と反比例する動きを見せている。

 原油価格は下がったものの、市場は安定してはいない。そのため一部のアナリストは、再び需給の影響で相場は上昇する可能性があると主張している。

 今年初め、いくつかの投資銀行が、原油価格は「大暴騰」するとの予想を発表した。中国や中東で急速に膨らむ需要に生産が追いつかないとの見方からだった。

 米証券大手ゴールドマン・サックス(GS)のエネルギーストラテジスト、アージュン・マーティ氏もそうした予測を出した1人だ。同氏は、数カ月以内に原油価格は1バレル200ドルに達すると予想していた。

 確かに、一部の専門家が予測しているように、再びドル安になったり、産油国が価格維持のために減産したりすれば、原油価格は上昇する可能性もある。OPEC(石油輸出国機構)は9月9日にウィーンで会合を予定しており、1バレル100ドルを維持する方針を打ち出すことを示唆している。


■再びハリケーンが米国を襲う可能性も

 気象面での不安要素も多い。9月2日、熱帯暴風雨(最大風速18メートル以上)「ハンナ」が週末にもジョージア州とサウスカロライナ州に上陸するという予報が出された。2日の夜には、ハンナが再びハリケーン(同33メートル以上)になる可能性もあるとの予報が出た。1日の夜に大西洋上に発生した熱帯暴風雨「アイク」は、バハマに接近しながら、数日中にハリケーンに発達するかもしれない。

 さらに、熱帯暴風雨「ジョセフィーヌ」が大西洋東部で発生した。米国立ハリケーンセンターによると、ジョセフィーヌは西に移動しながら、ハリケーン並みに勢力を強める恐れがあるという。

 結論として言えることは何か。原油マーケットに関してはっきりしているのは、市場が不安定だということだけだ。「原油価格が今後どうなるかは、全く分からない。ゴールドマン・サックスに聞いてくれ」と、オッペンハイマーのゲイト氏は述べた。

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URL:http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20080908/169869/

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