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緊急報告:何故米国はリーマンを救済しなかったのか


 つい先ほど(2008年9月16日正午)、ポールソン財務長官の”リーマンに関しては公的救済を一度も考えなかった”という主旨の発言が、流れていました。その理由についてよく読むと、”3月とは状況が異なるから”というものでした。
 状況が異なる? ベア・スターンズ、ファニーメイ、フレディマックは救済し、なぜリーマンは見殺しにしたのか。資産規模、市場に与える影響を考えると、リーマンが最大であり、これらの中では最も救済すべき存在であるにもかかわらず、なぜ破産に追い込んでしまったのか。昨日からの疑問でしたが、これで一つの答えらしきものが見えました。以下は私なりの米国政府の真意の解釈とその分析です。
 
 まず、ポールソンの言葉ですが、正確には、3月とも、7月とも違う状況であるから、今回はリーマンを救済しなかったと解釈すべきでしょう。3月はベア、7月はファニーです(決着したのは9月ですが、公的資金導入に向けて動き出したのは7月です)。その理由は、それぞれの金融機関の資産内容が良いとか悪いとかでも、収益性が良いとか悪いとかでもなく、はたまた社会全体に与える影響度合いが大きいとか小さいとかでもないように思われます。何故なら、個別要因を比較しても、ベアとファニーに共通し、リーマンに当てはまらない、ものなど見当たらないからです。
 だとすれば外部環境にその原因があるはずです。しかし米国の株価は、3月も、7月も、そして9月も、同じように危機的状況であり、ここには違いはありません。だから株価が原因でもはない。
 3月、7月に危機的状況を迎えたものの、9月にはそれを脱しているのはドルです。3月、7月、とユーロ、金は急激な上昇を見せていました。原油などは7月まで一直線に上昇していました。それらが今回は皆下落途上にあります。本来、最も足の速いはずのユーロは、リーマン破綻のニュースを受けて一瞬1.45まで買われましたが、すぐにまた1.42まで売り戻されました。ドルは現在危機的状況ではない、即ち、ベアやファニーとは異なり、リーマンが破綻しても、ドルの信認は保たれているのです。

 ここにポールソンの決断の真意が隠されているように思います。確かにリーマンの破綻はショックとしては大きい。しかしドルの信認が保たれていれば、やがて資本はまた米国金融市場に帰ってくる。実際、米国の金融株はリーマンが破綻したにもかかわらず、全体で見れば7月の安値を下回ってはいない。確かに米国および世界全体の株価はリーマンが保有していた資産の強制売却が発生するために一時的なショック安に見舞われることは仕方のない話であるが、ドルの信認が保たれている限り、連鎖することは無い。
 こんな風に予測し、ポールソンは公的救済を見送ることを決意したのではないでしょうか。もしそうであれば、今晩からのNY市場が本当の勝負です。ドルの価値が保たれ、株式市場が平静を取り戻せばポールソンの見立てが正しかったことになります。

(注:円から市場を見ると、現在はドルの信認が揺らいでいるように見えますが、これは間違いです。世界の投資家は、円はドルの従属的通貨と見ていますから、ドルの信認あるいは不信認という構図には登場しません。)

URL:http://phi.fisco.co.jp/column/819279
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